window.open()でサブウィンドウを開く特許

 window.open()でサブウィンドウを開くという特許が成立したもよう。
特許番号は3393199.
http://www3.ocn.ne.jp/~cipa/naoshift.html


 slashdotの議論も参照。しかし、騒ぎすぎですよおまえら。http://slashdot.jp/article.pl?sid=03/11/17/0826232&topic=54&mode=thread


 この特許、もう少し詳しくみてみます。
 出願細項目記事、審判記事登録記録を見てみますと、下のようになってます。

出願細項目記事:査定種別(拒絶査定) 最終処分(登録) 最終処分日[平15.1.31]
審判記事登録記録:査定不服審判 2000-12407 請求日[平12.8.8] 審判(判定含む) 請求成立 最終処分日[平14.10.22]

 一度、拒絶査定くらってますので、一旦、特許性がないと判断されてますが、査定不服審判請求がなされて、最終処分で登録となっています。


 そういうわけなので、特許審査官がアホだとか、普及するまで5年間寝かせて置いただとかいう指摘は全部的外れです。それにもともと、早期審理対象出願になっているので、早期の特許成立を狙ったのだが、もめたためにいままで遅れた、という見方が妥当でしょうか。


次にクレームの範囲を見てみます。

【請求項1】 中央演算装置及びメモリを有したコンピューターによって実行される方法であって、前記コンピュータに接続された通信機器により他のコンピュータ及びそれらのネットワークから通信インターフェースを介してhtml情報を受信しwwwブラウザにより表示させるためのwebサイトの設定方法であって、受信した該html情報に有する小ウィンドウを起動するプログラムが、該html情報に基づく親ウィンドウの読込みと平行して該小ウィンドウを作成する段階と、該小ウィンドウのhtml情報を読み込みwwwブラウザにより画面に表示する段階と、該小ウィンドウを消去する段階とからなる転送待ち時間割込みファイルwebサイトの設定方法において、前記小ウィンドウのhtml情報を読み込み画面に表示する段階は、複数作成された小ウィンドウのhtml情報のファイルのうち、発生させた乱数と同じ番号の該ファイルを読み出すことにより、アットランダムに読込み画面に表示する転送待ち時間割込みファイルwebサイトの設定方法。
【請求項2】 前記小ウィンドウを消去する段階は、前記親ウィンドウの読込みが完了した場合に実行される請求項1記載の転送待ち時間割込みファイルwebサイトの設定方法。
【請求項3】 前記小ウィンドウを消去する段階は、該小ウィンドウに作成された終了ボタンを、ユーザーがクリックした場合に実行される請求項1記載の転送待ち時間割込みファイルwebサイトの設定方法。
【請求項4】 中央演算装置及びメモリを有したコンピューターによって実行される方法であって、前記コンピュータに接続された通信機器により他のコンピュータ及びそれらのネットワークから通信インターフェースを介してhtml情報を受信しwwwブラウザにより表示させるためのwebサイトの設定方法であって、受信した該html情報に有する小ウィンドウを起動するプログラムが、該html情報に基づく親ウィンドウの読込みと平行して該小ウィンドウを作成する段階と、該小ウィンドウのhtml情報を読み込みwwwブラウザにより画面に表示する段階と、該小ウィンドウを消去する段階とからなる転送待ち時間割込みファイルwebサイトの設定方法において、該小ウィンドウのhtml情報を読み込みwwwブラウザにより画面に表示する段階の後、小ウィンドウに入力画面を作成し、その入力値により親ウィンドウにURLとして引き渡して新たな読み込みを始める転送待ち時間割込みファイルwebサイトの設定方法。

 請求項1〜3については、発生させた乱数と同じ番号の該ファイルを使用し、かつ、小ウィンドウを消去する段階があり、かつ、平行(並行?)に読み込まなければ抵触しません。抵触しないようにしようと思えば、乱数を使わないようにするか、onLoadイベントを使用するなどして並行読み込みをさせなければ問題なし。回避は簡単そうです。
請求項4は、入力値を親ウィンドウに引き渡すという点が入っているのですが、これもonLoadイベントを使用するか、あるいは親ウィンドウではなくて他のウィンドウに引き渡せば簡単に回避できそうな内容です。


 たとえ特許として成立したとしても、こんな簡単な回避方法があるのでとてもライセンス料が集められるとは思えない。

 何で大手に請求しないのかとか、いろいろありますが。もちろん大手はこの特許の存在くらいとっくに知っていたでしょう。大手は多分、こんな感じで考えてたのではないでしょうか。あくまで想像です。

  1. なんか変な特許が出願されるなー。とりあえず成立しそうにないからほっとこうかー。
  2. 審査請求してきたなー。とりあえず情報提供*1しとこか。これで潰れるやろ。
  3. とりあえず拒絶査定でたし、これで多分潰れるんとちゃうか。
  4. なんか査定不服審判してきたで。あれ、成立してしもたー。
  5. うっとおしいけど、まぁ回避も簡単そうや。向こうが何か請求してきたら、特許無効審判請求*2すればいいやー。勝てるでしょ。

 他には異議申し立て*3という制度がありますが、これは行われなかった模様ですね。こんな感じなので大手はほとんど慌てていないかと。
 この、文化情報推進協議会とやらが、大手にライセンスを吹っかけないのは、無効審判請求が怖いからでしょうか。たとえば10社くらいに吹っかけて、次々と無効審判請求を起こされたらどうしますか。10件全部勝たなければ特許権は消滅ですよ。一件でも負けたらそれで特許権は消滅。そういうものです。


 他にもつっこみどころは満載ですか、つっこみは他でもやってますし、特許実務からみるとこんな感じなのではと言うのを想像で書いてみましたがいかがでしょうか*4

*1:特許官の審査の助けになるように、公知文献などを提出すること。主に特許成立を阻むために使用される

*2:特許庁に対して、特許権の無効処分を求める請求のこと。裁判と同じく利害関係者しか請求できなかった気がします。通常、口頭審理が行われます。

*3:審査請求が出た時点で、特許性について異議申し立てを行うこと。企業名とかで異議申し立てすると何か恥ずかしい?ので、適当な個人がダミーとして使われる事が多いです

*4:研究開発に携わってる人なら、特許読んだり書いたり潰したりは普通のことですよ