知りたくない権利って何ですか。

http://net-society.org/modules/news/article.php?storyid=7

募集概要: 実社会でもネット社会でも、迷惑情報や有害情報などを視聴したくないという人が子どもから成人まで、どんどん多くなっていると思われます。そこで、知る権利の反対の意味を表す言葉、すなわち、見たくない・知りたくない権利を表わす「○○権」というネーミングを公募し、それらの中から最良のものを選び、今後のさまざまな啓蒙活動に使って、広く認知を得ようと考えています。皆さまからの多数の応募をお待ちしています。
募集理由の詳細は別紙1の背景説明をご参照ください。


私の頭が足りないせいか、さっぱり理解できないのですが。知る権利の反対の意味、というのがまず意味がわかりません。権利の反対って、何ですか。goo国語辞典で聞いてみると、対義語は「義務」らしいです。ということは、「知る権利」の反対は「知る義務」になりますか。違いますか。違いますね。


ええと、別の考え方をしてみましょう。考えを整理するために、知る権利、じゃなくて、ここでは自由権を考えて見ましょう。自由であるというのは、それなりにしんどいことです。エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」なんかを参照してください。当時最も民主的な憲法を持っていたワイマール共和国下で何故ナチスが台頭してきたかを精神分析学的に考察した本なんですけど。


だから、ここで不自由である権利を主張してみるのは、それなりに合理性のあることです。不自由権?不自由である権利ですか。それで、そのような権利があるとして、誰かに対して、「あなたには不自由権があります。あなたは明日、これこれの服を着て、どこどこへでかけ、何何を食べます。これはあなたの権利です。」って言うのはありですか。ありかもしれません。たとえば、制服だと明日着ていく服を考えなくて楽だ、などと言うのに似ていますよね。そういうことです。


でもこれを強制されるのはおかしいですよね。強制されるのは、権利ではなくて、義務です。権利行使は選択であるはずです。


ええと、つまり、権利、というのは、行使する自由と行使しない自由があってはじめて権利たりえます。たとえば、子どもを産む権利があります。産む/産まないを選択できない権利(産むことを強制される権利)は、もはや権利ではなくて義務です。投票する権利、は投票する/しないが自由であるからこそ、権利たりえるのです。だから、投票を義務づけてはいないでしょう?(逆の例を出すなら、現在でも、投票率100%なんて言う独裁国家があるでしょう日本近海に。)


すなわち、「知りたくない権利」は「知る権利」に内包されています。知る/知りたくない を選択できることが「知る権利」です。歴史的経緯として、今まで、知らされないという弊害が大きかったからせいで、「知る」ことのほうに重点が置かれたから「知る権利」という名前になっただけだと思いますたぶん・・。


行使する/しないの選択が保障されているというのは、権利が権利としていきいきとして生存するためには、必要なことです。知りたくない権利、などと言い出すのは、かえって知る権利そのものを貶めることにつながります。


まあ名称がまずい、というのを自覚していらっしゃるので、名称募集をかけてるんだろうとは思いますが。

有害情報、迷惑情報は、誰が決定するのか。知る権利/知りたくない権利を持ち出すなら、情報フィルタリングの主体(あるいはフィルタリングを設定する人)は、その人でしかありえないような気もするんですがどうでしょうか。でも実社会での情報フィルタリングって難しそうなんで、とりあえず公共広告全面禁止あたりからはじめたらどうでしょうか。無理ですか。



追記。無理なの分かってて書いてますごめんなさい。