経皮毒なんてうそなんでしょ?その2

その1のほうもどうぞ。だいたいは1のほうで書いてあります。
MLM周辺は伝言ゲームの様相を呈しているので、いちいち間違っている点を指摘してもきりがない気がします。たとえば経皮性吸収なんて造語を相手にしてもしょうがないし*1・・。そこで、経皮毒研究会の記述をベースにすることにします。この研究会は経皮毒関連の著作がある山下玲夜、稲津教久、池川 明、真弓定夫ら(敬称略)が参加しており、比較的まともだと思われるからです。
そこで読んでみたのですが、およそ科学的検討には耐えられないものばかりでした。たとえば、化学物質の性質として書かれたこのページから。

脂溶性:油に溶けやすい性質。
合成化学物質は脂溶性の性質をもっている。

脂溶性じゃない合成化学物質もたくさんあります。パーソナルケア製品でいえば、たとえばカルボマーとか、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤は油に溶けそうにありません。シリコーン(silicone)も油と混ざりません。

濃度:高いもののほうが吸収率が高くなる

吸収率は普通、ある化学物質を適用してどれくらいの割合が吸収されるかで表します。化学物質はフィックの法則に従う拡散によって皮膚内に浸透していくので、単位時間・単位面積あたりの吸収量はたしかに濃度が高いもののほうが大きいのです。しかし吸収率で見た場合には、濃度が高い場合には分母も大きくなるので、濃度が高いもののほうが吸収率が高くなるとは言えません。いいたいことはわかるのですが、不正確な記述です。

分子量が500以下(小さいほど吸収率が高い)
石油化学物質はほとんどが分子量500以下です。
・プロピレングリコール・・・・・76.1
・ラウリル硫酸ナトリウム・・・288.4
・アルミニウム・・・・・・・・・・26.98

分子量が500以上の石油化学物質もたくさんあります。ナイロン、ビニロンなどの高分子やあるいはラウレス-10などの非イオン系界面活性剤などは500以上あります。でもこれは「ほとんど」って書いてあるので、よいことにします。問題があるのは、アルミニウムが26.98と書いてあるところです。タイトルやプロピレングリコールやラウリル硫酸ナトリウムの数字からこれは分子量だと推測できますが、アルミニウムは分子量ではありません。26.98はアルミニウムの式量で、式量と分子量の区別がついていないのではないかと思われます。式量は吸収率と関係ありません。
何か細かいことばかり指摘してるような気もしますが、それは科学的に不正確であるからで、およそ一般的な物理・化学知識を有するのか疑わせるものであるからです。


次は化学物質成分表から。経皮吸収増強効果、という項目があるので、これに関してコメントしてみます。
Q
プロピレングリコールやラウリル硫酸ナトリウムは、経皮吸収を増強させる効果があるから危険なのでは?
A
たしかにプロピレングリコールやラウリル硫酸ナトリウムは経皮吸収を増強させる可能性があります。しかし、それはプロピレングリコールだけではなく、グリセリンやBGなどの他の多価アルコールでも、また、ラウリル硫酸ナトリウムだけではなく、石鹸やコカミドDEAなどの他の界面活性剤でも同様に増強させるでしょう。多価アルコールや界面活性剤以外でも、たとえばオリブ油やエタノールなどでも経皮吸収を増強させます。そしてもちろん水もすぐれた媒体です。プロピレングリコールとラウリル硫酸ナトリウムをとりたてて悪いとする合理的な理由はありません。経皮吸収をどれくらい促進させるかいくつかの成分で比較したデータがあればそれをもとに定量的な議論ができますが、おそらくそんなデータ無しに言ってるのではないかと考えています。ここで挙げられている成分はたまたま旧指定成分だったから悪者にされているだけで、合理的な理由なんて無いように見えます。*2


そもそも今のシャンプーやボディーソープ、洗顔料にはラウリル硫酸ナトリウムなんてほとんど使ってないかと思います。歯磨きには入ってるんじゃないかな。体験談も・・1は山下玲夜さんの体験談でしょうか。とかとか珍しくもなんともなく、経皮毒なんて言葉が言い出される前からあったよくある話で、これらのような対応はごく当然のように行われていました。皮膚から吸収されることもある、ということがいいたいのでしょうか。皮膚に疾患があるときはタオルでこすってはいけないのは常識で、タオルでこするのをやめただけで軽快してきます。ラテックスアレルギーは存在しますが、アレルギーの無い人にとってはなんでも無い話です。そば・小麦・卵などはアレルギーのある人には時には致死的になりますが、健常な人にとってはなんでもなく、健康に役立つ食べ物であるのと同じです。
経皮毒は危険とか、根拠の無い危険性を煽るのはどうかと思います。

*1:普通は吸入っていうんですよ。。なんで造語を作りたがるのか。

*2:表示指定成分は特に悪いわけではなく、さまざまなものがあるので別個に議論が必要です。セタノールのような安全なものがなんで表示指定成分なんだ、と皮膚科の学術雑誌に書いてた皮膚科の先生もいました。