タルクの発がん性の話。経皮吸収するわけないだろ常考。

経皮毒ついでに書いてみます。
ベビーパウダーに含まれるタルクが経皮吸収されるみたいな書き方をしてるところ*1もありますが、タルクは経皮吸収されません。ナノ粒子でさえ、皮膚透過しない*2と言われているのに。それにタルクは板状をしていて、その形状が滑らかさを生む一つの要素となっているので、微細化して滑らかさを損なうなんてことは普通しないので、ベビーパウダーに使用するようなタルクは大きなサイズのままです。
タルクの発がん性はいろんなサイトで断片的に語られてますが、IARCが評価しているのが一番まとまってるのでその要約部分*3の日本語訳を載せときますね。
結論から言えば、ボディーパウダーの会陰部への使用と卵巣がんを結びつける研究はあるけれども、リコールバイアス(もし女性が卵巣がんを持っていたら、ボディーパウダーの使用を報告しすぎる)の影響があるかもしれない。さらには1970年代半ば以前のボディーパウダーにはアスベストを含むものがあった。リコールバイアスを受けない前向きコホート研究では、その関係は支持されない。ということでしょうか。

タルクは鉱物タルクと、鉱物タルク35%〜95%以上を含む工業製品を指す。鉱物タルクは自然には平らな形をとるが、一般には、たとえば石英アスベストのようなアスベスト様繊維と関連している。アスベスト様タルクはアスベストを含むタルクと混同されるべきではない。タルクは農産物、セラミック、化粧品、塗料、コーティング、紙、製薬、プラスチック、屋根用の材料、ゴム、廃棄物処理に利用される。職業暴露は採掘、製粉、工業用途で生じる。消費者への曝露はタルクベースのパウダーの使用、たとえばベビーパウダーやボディーパウダーの女性の会陰部や性器への使用によって生じる。

様々な国でタルクの鉱山労働者、製粉労働者に対するコホート研究が評価のために利用可能である。米国の鉱山労働者では、肺がんの過剰リスクに注意されたが、このリスクはラドン石英によるものかもしれない。他のコホート研究はがんの増加を報告していない。フランスとオーストリアでのネスティド・ケース・コントロール研究ではタルク粉塵の累積曝露による肺がんの高いリスクは見られない。ノルウェーのパルプと製紙産業で働く女性の研究では卵巣がんのリスク増加に注意されたが、これはアスベスト暴露の結果と考えられた。ワーキンググループは疫学研究がアスベスト繊維を含まない吸入されたタルクの発がん性の不十分な証拠を提供したと結論した。

タルクはラット、マウス、ハムスターで様々な投与経路で試験された。長期吸入試験は雌雄で肺胞と細気管支がん、副腎の褐色細胞腫の増加を示した。この増加は動物での発がん性の限定的な証拠を提供した。ワーキンググループはアスベストを含まないかアスベスト様繊維を含まないタルクの吸入はその発がん性が分類できない(グループ3)と結論した。

タルクベースのボディーパウダーと卵巣がんのリスクの関係について、前向きコホート研究と19のケースコントロール研究の疫学のデータに特に注意が向けられた。コホート研究ではその関係を支持しないが、ケースコントロール研究では高度な一貫性を示した。8つの研究では30-60%のリスク増加を示し、他の研究も同様の相対リスクを示した。二つの研究のみ、最も高暴露の女性が最も高いリスクであることを示唆した。ケースコントロール研究は、もし女性が卵巣がんをもっていたらボディーパウダーの使用を報告しすぎるというリコールバイアスの影響を受けているかもしれない。一般に、これらの粉は石英を含んでいる。さらに低濃度のアスベストが、1970年代半ば以前のボディーパウダーにときおり存在するが、報告された利用可能な情報は少なく、繊維特定の分析はしばしば不十分であった。バイアスと交絡因子の慎重な評価の後に、疫学研究によるタルクベースのボディーパウダーの会陰部使用の発がん性の限定的な証拠があるとワーキンググループは結論し、ひとに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)と分類した。

*1:ttp://www.keihidoku.com/archives/50672204.html

*2:Skin Pharmacology and Physiology, Volume 21, Number 3, 2008, Nanotechnology, Cosmetics and the Skin: Is there a Health Risk? G.J. Nohynek, E.K. Dufour, M.S. Roberts

*3:Lancet Oncologyに載ってました。モノグラフはまだ出てません。